1960年代から70年代にかけて、アルファロメオの最上級モデルとしてデビューしたのが「1750」シリーズです。その特徴的な数字は、実はアルファロメオの歴史の中でもメモリアルなものだったのです。どんなモデルだったか、ちょっと見てみませんか。
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「1750」の由来

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1750 ベルリーナ
1930年代に大活躍した名車のネーミングから
「1750」は、アルファロメオにとってメモリアルな数字です。
1930年代に「6C1750 グランスポルト」という名車があり、その名の通り直列6気筒、1,752ccのエンジンにスーパーチャージャーを装着し85馬力を出力、レースで大活躍しました。また軽快でシンプルなボディラインでも人気を集め、草創期のアルファロメオ躍進の原動力ともなりました。

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6C1750 グランスポルト
1967年にデビュー
そのメモリアルナンバーを与えられて、1967年に登場したのがアルファロメオ 1750シリーズです。
当時、アルファロメオは「ジュリア」シリーズが大人気となっており、「ベルリーナ(イタリア語でセダンの意味)」と呼ばれた4ドアセダン「ジュリア」のほか、クーペの「ジュリアス プリント」、さらにオープンモデルの「ジュリア スパイダー」を展開、1,300ccと1,600ccの当時としてはハイスペックなDOHCエンジンと5速マニュアルで、ヨーロッパはもちろん、日本やアメリカのクルマ好きを夢中にさせていました。

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1750 GTV
ジュリエッタ、ジュリア、そして・・・
ちなみに、アルファロメオの豆知識でよくでて着るのですが、第二次世界大戦後に小型車をリリースしたとき、そのネーミングを「ジュリエッタ」としました。
これは、シェイクスピアの有名な戯曲「ロミオ(ロメオ)とジュリエッタ」から来るもので、“アルファロメオとジュリエッタ”という、何とも大らかな発想によるものでした。
その後、上級車種を発売するとき、“ジュリエッタのお姉さん”という意味で「ジュリア」と名付けられました。イタリア語では、ジュリエッタとジュリアは、そのような意味合いがあるそうです。
そのジュリアのさらに上級車種としてデビューしたのが、この「1750」シリーズです。さすがにジュリアよりもさらにお姉さんは見当たらなかったらしく、アルファロメオのメモリアルナンバーが、ネーミングに使われることになりました。
シャシーはジュリアシリーズをベースとしているのですが、「ジュリア 1750」ではなく、単に「アルファロメオ 1750」が正式名です。
1750のラインアップ

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セダンとクーペの2モデル
1750シリーズは、4ドアボディの「1750ベルリーナ」とクーペの「1750 GTV」のほか、ワゴンモデルの「ジャルディネッタ」なども販売されています。
エンジンは、ジュリアシリーズの1600ccエンジンを拡大した1,779cc。通常なら1,800ccと表記しますが、冒頭にも書いたような事情から1750と表記します。
単に「1800」と名乗るよりはその方が何となくありがたそうな感じがします。そんなイメージもアルファロメオの思惑通りだったのかもしれません。
ちなみにこの「1750」は、現代のFFモデルの「ジュリエッタ」やミッドシップスポーツ「4C」が搭載しているエンジンにも使われています。
大きくなったベルリーナ
4ドアボディの1750ベルリーナは、ベースとなったジュリアよりも全長が20センチほど長くなり、ホイールベース2,578mm、全長4,394×全幅1,575×全高1,430mmでした(ジュリアはそれぞれ2,510、4,110、1,560、1,430mm)。
拡大されたホイールベースで、大人5人が快適に乗れるスペースが確保され、さらにトランクルームも拡大され、ファミリーカーとしての実力をさらに高めました。

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1750 ベルリーナのインテリア
最高時速190キロのGTV
クーペボディの1750GTVは、ボディサイズはジュリアスプリントシリーズとほぼ同じ、ホイールベース2,350mm、全長4,089×全幅1,575×全高1,321mm。122馬力のエンジン出力に車重1,038kgで、ゼロヨンを約18秒、時速190キロの快速を誇りました。

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ゴージャスな内装
特徴的なのは、内装です。ラインアップの上級車種らしく、シートのデザインや作り、素材なども凝っていて、ファブリックでシンプルに作られたジュリアシリーズよりはゴージャスなイメージでした。メーターパネルも木目のフィニッシャーや燃料・水温・時計の3連サブメーターなども与えられ、当時のハイオーナーカーのムードが漂っていました。
こうした上質なインテリアを評価するファンも多くいます。

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1750 GTVのダッシュボード
いちばんの特長は、“いいとこ取り”のエンジン

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軽快な回転フィールと充実した低速トルクを両立
この1750の走りは、「いいとこ取り」というキーワードで表現できます。
これより小さな1,600エンジンは、軽快に回りスポーティムード満点なのですが、街乗りなど場合によっては低速トルクが今ひとつという印象が拭えない点があります。
その点、1750のエンジンはアルファロメオならではの軽快な回転フィールはそのままに、排気量拡大によってより充実した低速トルクにより、街中の交差点でもキビキビと楽しく走れる、そんなキャラクターを獲得していました。
さらに大排気量の2,000ccエンジンは
これよりも大きな2,000ccエンジンも登場するのですが、こちらはより強力なパワーとたっぷりとしたトルクはあるものの、回転フィールがどうしても“どっしり”としてしまう傾向があります。
こうしたことから、1,300ccから2,000ccまでラインアップされたこの時代のエンジンにあって、1750のエンジンがベストバランスと評するマニアの声を多く聞きます。筆者自身もそうだと思います。とはいえ、1,300ccは高回転での楽しいフィールが、2,000ccになると迫力のパワーなど、それぞれに替えがたい魅力を備えているのですが。

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古き佳きアルファロメオが薫るシリーズ
1971年には、1750シリーズよりもさらに上級の「2000ベルリーナ」「2000GTV」が登場します。少しひかえめだったグリルが、2000シリーズになってより大胆に、GTVなどは彫刻的になり、それがこのモデルのスペシャリティを際立たせていました。この2000を最後に、ジュリアから続く人気モデルのシリーズはフルモデルチェンジされ、「アルフェッタ」シリーズへと受け継がれていくことになります。
1750シリーズも2000シリーズも、ここ日本へも主にイギリスの右ハンドル仕様が相当数輸入され、いまなおオーナーのもとで大切にされているモデルがたくさんあります。戦後のアルファロメオの薫りを今に伝える貴重なモデルとして、これからも乗り継がれていくことでしょう。

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